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第26章 身の程知らず…



「さっさと行きなさい。」


笑うお母さんが私の背中を押す。


「いってきます。」


今日は始業式だけ…。

早めに帰って涼ちゃんとジムに行こうとか考えながらバスに乗る。

思えば、このバスに乗るのも後僅かな事…。

短大へは電車通学に変わる。

少しだけセンチメンタルを感じて学校へ向かった。

学校では地味な優等生…。

いつもと同じだと教室に入ると微妙なクスクスと笑う声がする。


「おはようございます。」


教室に入る礼儀だけで挨拶をして自分の席を見ると足が竦んで固まった。


『身の程知らず』


そう白いチョークで殴り書きをされた古びた机に近付けずに戸惑ってしまう。

お嬢様学校…。

派手なイジメはない。

それでも多少の嫌がらせレベルはチラホラと見かける事はある。

それが今になって自分に向けられるなんて全く思ってもみなかった。


「おはようございます。」


立ち止まった私の後ろに私よりも更に優等生で成績優秀な国分さんが入って来た。

彼女は完全に孤独を貫く人。

なかなかの美人なのに常に本を読んでいるイメージしかない学生。


「幸村さん、大丈夫?」


私の机を見た国分さんが肩を叩いて聞いて来る。

我に返り国分さんを見た瞬間にまたクスクス笑いが始まった。

咲良ちゃんとそのお取り巻きの笑い声…。


「雑巾を取って来る間だけ私の荷物を置かせて貰える?」


幸い国分さんは私の斜め後ろの席。


「いいよ…、一緒に行こう。」


国分さんの席に鞄を置き、掃除用具を入れたロッカーから雑巾を出して手洗い場に向かった。


「北川さんと何かあったの?」


国分さんの質問に答えようがなくて苦笑いだけを返すしかなかった。


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