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VERTEX
第27章 負けたくない…



「涼ちゃんは涼ちゃんのままでいいよ。涼ちゃんらしいやり方で頂点として頑張ればVERTEXも世間の人もいずれは私を認めてくれる。」


本当は嫌だけれど、そうやって涼ちゃんの背中を押すのが私の役目なんだと思う。


「おばさんが言うように、俺が学校に行こうか?」

「これ以上、騒ぎを大きくしたくないの。」

「俺は理梨を守りたいんだ。」

「なら前だけ見て、頂点を目指して…。霧島さんの後は涼ちゃんしか居ないんだから…。ミケなんかに負けたら許さないよ。」

「理梨が望む通りにする。」


犬男は犬男のまま私の頬にキスをしてご機嫌な笑顔を私に向けてくれる。

平凡な私はそれだけで満足だ。

ジムに着くなり怒鳴り声がする。


「さっさと着替えて練習しろ。」


ハリセンを振り回す会長さんが涼ちゃんにリングに上がれと促した。

リングの上には既にミケが居る。

涼ちゃんといきなりスパーリングをさせるつもりの会長さんの考えに驚いた。


「会長さん…。」


私が会長さんに声を掛ける前に篠原さんが私の肩を叩いて止める。


「大丈夫…。あくまでも練習だ。」


篠原さんが余裕の顔をする。

だけど私は不安になる。

ミケのセコンドに霧島さんが付いている。


「なんで…、霧島さんがセコンド?」

「霧島は今までほどの練習をしないから、うちのジムのやり方にミカエルが慣れるまで霧島がミカエルの伴奏に付くんだよ。」


それが当たり前のように篠原さんが言う。

だって…、霧島さんを倒した人だよ?

涼ちゃんから頂点を取るつもりの人だよ?

指にバンテージを巻きながら涼ちゃんがリングに近付いて来る。


「理梨…、セコンドを頼む。」


涼ちゃんが私にタオルを渡して来る。


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