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第27章 負けたくない…



ミケとのスパーリングが危険だと私が判断したら止める権利を手に入れた。

涼ちゃんを少しでも傷つける事をミケがすれば私がすぐに止めてミケに噛み付いてやると意気込んだ。

なのに…。

見とれていた。

ミケの完璧なフットワーク…。

リングの上を征しているのは涼ちゃんでなく、明らかにミケの方…。

常にリングの中央をミケが陣取り、涼ちゃんが振り回されている。

階級が違うのだからミケが涼ちゃんよりも大きく見えるのは当然の事だけれども、その優雅で巨大なミケ猫の周りをちょこまかと動く仔犬程度に涼ちゃんが見えてしまう。


「圧倒的だな…。」


篠原さんがミケを褒める。


「そんな…、信じられない。涼ちゃんよりもミケの方が強いって事ですか!?」


私だけがパニックになる。


「いや、大丈夫…。見ててやって…。」


篠原さんが細い目を更に細めてニンマリとする。

スパーリングは3R目に突入した。

少しずつ、ミケが居た中央の位置がズレ出した。

涼ちゃんがニヤニヤと笑い出す。

ミケが眉を顰めて嫌な顔をする。


「ボクサーとしてはミケは一流だと思う。だけど格闘家としては涼二の方が上だ。ミケのフットワークのリズムを涼二は吸収している。あの才能が涼二の強さに繋がっている。」


落ち着いた表情で篠原さんが言う。

涼ちゃんならミケに負けないとわかってて会長さんや篠原さんはミケを涼ちゃんのスパーリングパートナーとして認めたのだとわかる。

ミケから涼ちゃんが学ぶ事が多い。

その全てを吸収して涼ちゃんが更に強くなる。

5Rが終わる頃にミケが肩で息を始める。


「そこまでだ。涼二はそのまま篠原とロードに行って来い。」


満足気な顔の会長さんが指示を出す。


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