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第3章 帰りたくない…



「おめでとう?」


こういう事には鈍い涼ちゃんがポカンとお馬鹿な顔をする。

昔から変わっていない私の好きな涼ちゃんだと思う瞬間だからちょっとだけ可愛いと思う。

涼ちゃんの頭を撫でて私の小籠包を与えながら説明をしてあげる。


「静香さんのお腹に霧島さんの子供が居るの。」

「マジッ!?おめでとうございます!」


子供好きな涼ちゃんが目をキラキラと輝かせた。


「ごめんね、理梨ちゃん達と楽しくご飯なら食べられると思ったけど…、まだちょっと無理みたい。」


静香さんがお母さんの顔をして穏やかに笑う。

そんな静香さんを羨ましいと感じる。

大好きな霧島さんと本当に家族になったんだ。

霧島さんの熱愛報道は涼ちゃんよりも酷くて二股報道とかまでもが発生した。

トーナメントで地方に遠征中だった霧島さんだからマスコミ対応も出来ず、下手に静香さんが恋人だと名乗れば三股だと言われたりするからと静香さんは黙って耐えるだけの人だった。

大人しくて控えめな静香さんだけど本当は強い人だと思った。

当時、霧島さんを信じて穏やかに笑う静香さんの為にVERTEXなんか潰れちゃえばいいとか私は考えたりもした。

まさかの涼ちゃんで自分が静香さんと同じ気持ちを味わうなんて思いもしなかったから私は見苦しくもがいている。


「涼二も理梨ちゃんは泣かすなよ。」


霧島さんが小籠包に夢中の涼ちゃんに言う。

愛してるを言ってくれない涼ちゃんなのに?

自分が涼ちゃんの恋人なのかすら自信がない。


「理梨は泣かさない。」


涼ちゃんがそう言い切った。

一瞬、ドキドキはする。

だけど…。


「小籠包を食べながら言われても…、説得力がないからカッコ悪いよ。」


照れくさくて、そんな嫌味が口に出た。


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