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第27章 負けたくない…



ファイターとしてのRYOJIしか知らないミケには霧島さんや私が言う涼ちゃんが不思議でたまらないらしい…。


「本当は泣き虫で頼りなくて弱い人なんだよ。」


歯を食い縛り、篠原さんとミット打ちを続ける涼ちゃんを見てミケに答える。


「あれだけの練習をするファイターのメンタルが弱いとか信じられません。」


ミケが軽く肩を竦める。


「泣き虫は嫌いだと私が言ったから…、だから涼ちゃんは歯を食い縛って我慢をしてる。私がそうやって涼ちゃんを追い込んでしまったの…。」

「だからお互いが我慢をする関係なのですか?」

「違うよ。お互いの為に我慢をしてるの…。お互いを思う気持ちが強過ぎてお互いが勝手にあれこれと我慢をしちゃうの。」

「それが理梨とMr.RYOJIの信頼関係ってやつですか?」

「信頼とかわかんない。ただ私が生まれた時から涼ちゃんが傍に居てくれる。それが当たり前の関係だからお互いを思う気持ちも他の人よりも強いと思う。」

「理梨はMr.RYOJIしか知らない世界で満足なのですか?」

「涼ちゃんが居ない世界は想像が出来ないからね。」


私は涼ちゃんしか見ずにミケと話をする。

ミケがどんな表情をしたのかはわからない。

だけど…。


「そんな関係はいつか息が詰まります。」


低く自分に言い聞かせるようにミケが呟いた。

何故、ミケが私に対してそんなに必死なのかすら私にはわからない。

それでも私は涼ちゃんしか見ないと決めている。


「初日から飛ばすな!」


相変わらずの会長さんがハリセンを振り回して涼ちゃんの練習を止めようとする。


「後…、1Rだけ…。」

「ダメだ。帰れ…、霧島さんやミカエルだってミット打ちをするんだからな。」


しぶしぶと涼ちゃんがリングから降りて来る。


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