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VERTEX
第28章 卒業…
「赤ちゃんは?」
「今は新生児室だから…、皆さんはそっちに見に行ったのよ。」
1階下にある新生児室はガラス張りの壁になっているから廊下側から見れるらしい。
「赤ちゃん…、見に行こうか?」
涼ちゃんが私に聞いて来る。
「霧島さんとお母さんと行って来て…、私は静香さんと話がしたいの…。」
「えーっ!?なら俺も理梨と残る。」
「邪魔だから行け…。」
「邪魔って…。」
泣きそうな顔をする犬男を霧島さんが頭を撫でて宥めてくれる。
「女同士の話は男が入るべきじゃないぞ。ミケも来てるから俺らは男同士の話をしに行こう。」
笑いながら霧島さんが涼ちゃんとお母さんを病室から連れ出した。
静香さんと2人っきり…。
聞きたい事が山ほどあるのに、それを聞いていいのかを迷って躊躇ってしまう。
「聞きたいのは…、恭ちゃんの事…?」
静香さんの方から話を切り出して来る。
私が小さく頷くと
「ミケさんに負けた深夜に帰って来て…、初めてあの人の言葉を聞いたの…。もう自分はVERTEXの頂点じゃなくなるんだって…。」
「怖くなかったですか?」
子供が出来るのに…、頂点を降りた霧島さん。
生活の不安とか、きっと色々とあったに違いない。
「怖いよりも寧ろホッとしたわ。これからはずっと私の恭ちゃんで居てくれるって感じたから…。」
穏やかに笑顔を向ける静香さんが今は本当に幸せなんだと感じる。
私が頂点である涼ちゃんが遠いと感じる時間はまだまだ続くのだろう…。
それでも…、いつか頂点から降りた時に私の涼ちゃんが私のところに帰って来てくれるんだと確信を得た。