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第28章 卒業…



静香さんがパジャマの上にカーディガンを羽織る。


「そろそろ授乳の時間なの。一緒に赤ちゃんを見に行きましょう。」

「赤ちゃんの名前は?」

「勝利(かつとし)…、勝利って書くの。恭ちゃんが強い子にするんだって今から張り切ってるから本当に困ってる。」


アスリートとの結婚の大変さを静香さんが一番よくわかっている。

その大変さがとても幸せな事なんだと静香さんが私に教えてくれる。


「涼二君なら…、恭ちゃんよりも凄い頂点になるよ。だって無敗のファイターだもの…。」


静香さんが私の肩を叩く。

私もそうは思う。

この数週間で涼ちゃんが出たテレビ番組は8本…。

春のトーナメントの開幕までは次の頂点としてテレビ出演の依頼が殺到しているらしい。

だから涼ちゃんは強気でGグループのバックアップなんか必要がないと私に言う。

その代わり私とデートをする時間は全く取れない涼ちゃんがまた遠くに感じてしまうから寂しかった。

新生児室の前は凄い人集りになっている。

希君や望ちゃんを抱っこして赤ちゃんを見せているミケや加藤さん…。

篠原さんと会長さんも居る。


「私達は邪魔になるから、そろそろ帰るわ。」


温子さんがそう言うとうちのお母さんが


「じゃあ、悪いけど私も一緒に車に乗せてってくれる?理梨は涼ちゃんと後で帰るだろうから私は先に帰りたいの。」


と話をしている。

ガラスの向こうには小さなベビーベッドがたくさん並んでいる。


「あの子が静香さんの赤ちゃん?」


そう聞いた私に静香さんが頷く。


「霧島さんにそっくり…。」


小さな拳を握りしめて小さな欠伸をする勝利君が本当に可愛いと思った。


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