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VERTEX
第28章 卒業…



「理梨…。」


涼ちゃんが私に手を差し出す。

私は黙ってその手を握る。

ミケが抱っこしていた望ちゃんを下ろして膨れっ面をする。


「次は理梨がMr.RYOJIの子供を産むつもりですか?」

「まだ私には早いよ。静香さんくらいの大人になってからじゃないと子供なんて無理…。」

「Mr.RYOJIと離婚をする時は僕が喜んで弁護しますよ。」


ミケの言葉に今度は涼ちゃんが膨れっ面をする。


「勝手に離婚とかさせるな。」


まだ小さな望ちゃんだけが会話の意味がわからずに不思議そうに私達を見ていた。

静香さんが授乳で勝利君を新生児室から出したから私と涼ちゃんも帰る事にしようとすると霧島さんが涼ちゃんだけを呼んで引き止める。

ミケと涼ちゃんと霧島さんの3人だけが話をしているのを私はぼんやりと眺めるだけ…。

男同士の話をしている。

そこに私は入れない。

また知らない涼ちゃんを感じて来る。

静香さんのように私はちゃんと涼ちゃんが帰って来てくれる日を待てるのだろうか?

そんな小さな不安に胸が痛くなる。


「理梨…、帰ろう。」


話が終わると涼ちゃんが私を呼ぶ。


「霧島さんの話はなんだったの?」

「俺が完全に今年のVERTEXの頂点に決まったって話だよ。」

「完全に?」

「人気投票で霧島さんが2位に落ちた。今はミケさんが3位だけどすぐにミケさんが2位に上がって来ると思う。」

「つまり涼ちゃんが1位…?」

「そうらしい…。僅差だから油断とか出来ないけど…、VERTEX商品のメインは霧島さんから俺に変わるって説明を受けた。」


それは、あのサイン会で見た宣伝用ワゴン車が霧島さんの写真から涼ちゃんに変わるという意味。

カレンダーやポスターなども全て中央に涼ちゃんが立つ絵柄に変わって行く。


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