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VERTEX
第28章 卒業…
「卒業祝いをしてくれる約束なの。」
「でも…、それは中止して貰う事になりますよ。だってパパが今は誘っているはずですもの。」
「なんで咲良ちゃんのパパが?」
「来月にはCMの打ち合わせがあるから、その前にRYOJIさんとは一度、食事をご一緒したいってお願いしてあったの。」
「そのCMなら涼ちゃんは断った仕事よ。」
「VERTEXは必ず出るようにとRYOJIさんに言っています。」
またもやVERTEXと涼ちゃんとの間で話が食い違っている。
「前にも言ったけど…、涼ちゃんはタレントじゃないんだよ。咲良ちゃんがタレントをやりたいからって涼ちゃんの自由を奪わないでよ。」
「RYOJIさんの自由を奪ってるのは理梨ちゃんの方でしょ?」
ミケは私の自由を涼ちゃんが奪っていると言った。
そして咲良ちゃんは私が涼ちゃんの自由を奪っていると言う。
何故、私と涼ちゃんを理解してない人の目には、そう見えるのかと不思議に思う。
「ほらほら…、席について…。今日が本当に高校生活の最後なのですから…。最後くらいは有終の美を飾って下さい。」
いつの間にか教室に来た担任の先生が手を叩いて私達を席に座らせる。
「今日の卒業式に…、ちょっと有名な方が来ていて…、朝から騒ぎになっていますが、皆さんの卒業式で皆さんが主役です。落ち着いて聖女の名に恥じない卒業式を迎えて下さい。そして、この3年間で学んだ事をこの先の未来でも大事にして下さいね。」
先生が私達一人一人を懐かしそうに見る。
たったこれだけで感極まって目を潤ませる生徒がいるくらいに誰もが今日が卒業なんだと実感した。