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第29章 傍に居て…



そんな私を涼ちゃんが穏やかな笑顔で見る。


「理梨が食べたい物を作って食べればいいんだよ。俺は理梨の食べかけを食べるのが一番好きなんだ。」


泣き虫だったのに…。

いつから、こんな風に穏やかな笑顔で私を見るようになったのだろう。

自信満々で不安なんかなにも感じさせない笑顔に胸がキュンと痛くなる。

食事はデザートになり涼ちゃんは本当に私の分を1口だけ食べて終わらせた。


「行こうか…。」


スマートに私の肩を抱いてエレベーターに向かって歩き出す。


「泊まらないのに…、わざわざ部屋を取るとか贅沢だよ?」

「特別な日くらいは特別な事がしたいだけだ。」


少し照れた顔で涼ちゃんが笑う。

緊張する…。

今日はずっと涼ちゃんにドキドキとかして落ち着かない自分を感じる。

私の理想の男に涼ちゃんが変わっていく。

泣きそうな顔をして私にまとわりつくだけの犬男じゃない…。

寂しさ半分…。

嬉しさ半分…。

複雑な気持ちのまま涼ちゃんとホテルの部屋に入る。


「凄い…。」


ゆったりとしたL型のソファーに花が飾られたサイドテーブル…。

その正面にはスクリーンのような大型テレビにフカフカのダブルベッド…。


「まさかのスイート?」

「そこまで贅沢はしてない。このホテルって普通の部屋でもスイート並の装備なんだ。」

「でも…、シンプルだけど豪勢に見えて素敵だよね。」

「なら…、一緒に暮らすマンションはこんな感じのインテリアでまとめて貰おうか?」

「そんな事が出来るの!?」


てっきり2人でちまちまと買い物に行く事になるのだと思ってた。


「小さな物は買い物に行くけど…、家具とかはコーディネーターに頼んだ方が安くて綺麗にまとまってて仕上がりがいいらしい。」


テレビ局で専門のコーディネーターさんと知り合ったから、その人に依頼すると涼ちゃんが言う。


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