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第29章 傍に居て…



きっと家ではいっぱい練習をしたのだとわかる。

望ちゃんを抱っこする。


「ありがとう…。次は望ちゃんの入学祝いだよね。学校に入ったら、もうちょっと元気に言わないとお友達に自分の気持ちが伝わらないよ。」

「お友達…?」

「そうだよ。お友達をいっぱい作らないと学校は楽しくないんだよ。」

「頑張る…。」


望ちゃんが強く頷いた。

私も頑張らなければと思う。


「やる…。」


勇気君が私にプレゼントをくれる。


「なんで…、偉そう?」

「だってお前が偉そうだから?」

「まだ高校生のくせに生意気だ。」

「おまっ…、本当に偉そうだな!?」

「今年もチャンピオンを取りなさいよ。」

「お前に言われなくても取るよ。酒屋の宣伝になるんだからな。」


お母さんの酒屋の為…。

胡桃さんが言ってた事が少しわかった気がする。

心の支え…。

霧島さんは静香さんの為…。

勇気君はお母さんの酒屋の為…。

だから私は涼ちゃんの支えであり続けなければならないのだ。


「明日から理梨は何をする?」

「午前中に教習所の申し込みをして…、午後は涼ちゃんとジムに行く。」

「俺が教習所に連れてってやるから…。」


涼ちゃんが私の頭を軽く叩くようにして撫でる。

涼ちゃんが居て皆んなが居てくれる。

皆んなの傍に居たい…。

皆んなに傍に居て欲しい…。

本当に幸せだと思った。

平凡な女子高生の平凡な卒業にこんなに人が集まってくれる幸せをくれた涼ちゃんに感謝する。


「ほら、理梨…、さっさと手を洗って来なさい。あんたが座らないと皆さん食事が始められないでしょ?」


お母さんの急かす声ですら幸せだと思う。

卒業をして新しい自分になる為の幸せなお祝いに私だけが浮かれてはしゃいで楽しんでいた。


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