この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
VERTEX
第30章 星に願いを…

思わず、和美さんに向かって私が確認をする。
「なんでVERTEXは霧島さんが一番人気だって事を隠す必要があるんですか?」
和美さんが冷たい表情を浮かべた。
「隠してるつもりはないわ。だけどエキシビションにしか出られなくなったファイターの人気なんか1年ももたないのよ。だから次の頂点に相応しいファイターを育てる必要があるのよ。」
「だからって…、涼ちゃんとミケを競わせるやり方はあんまりじゃないですか?」
「それが格闘の世界だもの。戦うのがファイターの仕事なのよ。」
和美さんは完全に居直っている。
「そういう事なんで…、Gグループが頂点を望むと言うのなら、今も本物の一番人気である霧島さんをCMに使うべきだ。」
涼ちゃんはそれだけを言うと私の手を握ってリングから降りる。
「まさかのアームロックです…。」
腕を擦りながらミケが涼ちゃんを睨んで来る。
「立ち技はミケさんは最高だよ。だけど寝技にはあまりにも弱すぎる。」
「わかってますよ。その為にMr.篠原が居る、このジムに移籍したのですから…。」
子供みたいにミケが膨れっ面をした。
「篠原さんに?」
「そうですよ。Mr.篠原は関節技の使い手としてかなりの有名人ですよ。」
そんな話は初耳だった。
篠原さんは元々が柔道をやっていて、寝技や関節技が得意な人…。
でもそれは、テレビ的には地味な技で勝っても人気には繋がらない。
「VERTEXは人気にこだわり過ぎなんだよ。勝てなきゃファイターの意味なんかねぇよ。」
涼ちゃんがファイターとしての顔で言う。
戦いをただ楽しみたいだけなんだと思った。
ミケや霧島さん達と戦って強くなる自分を楽しみたいだけの人なんだと笑っちゃう。

