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VERTEX
第4章 緊張する…
「お母さん…、早く。」
「急いでも新幹線の時間は同じよ。逆に急いで事故する方が嫌だわ。」
新幹線の時間は6時半…、東京までは約1時間。
更に東京から1時間で埼玉に行く。
6時前には新幹線の駅に着く。
サンドイッチやジュースの軽食を買って新幹線へと乗り込んだ。
「緊張するよね…。」
静香さんが小さな声で言う。
いつも静香さんと出来るだけ試合を見に行く。
もう何度も行っているのに、私も静香さんも毎回緊張をしちゃう。
好きな人が戦う。
もし負けたらどうしようと不安になる。
怪我とかしたら?
死にたい気分になる。
だから、この緊張は静香さんと私だけの秘密。
戦う霧島さんや涼ちゃんに心配をかけない為に必要な2人だけの秘密だった。
夕食代わりのサンドイッチすら本当は喉を通らない。
だけど…。
「ちゃんと食べないとダメですよ。」
赤ちゃんがお腹に居る静香さんの為に無理をして笑顔で食べる。
緊張をするからって私が食べなければ静香さんがますます食べなくなっちゃう。
「うん…。」
静香さんも一口、また一口とジュースで流し込むようにしてサンドイッチを食べる。
東京に着くまでゆっくりとサンドイッチを食べながら2人で緊張を誤魔化し続けた。
東京から埼玉までも約1時間だった。
9時前には何とか静香さんとホテルに入り交代でお風呂を済ませる。
「今日はもう寝ようか?」
静香さんが不安な顔で聞いて来る。
2人で無理に話をしていてもお互いが不安で憂鬱な話ばかりをしてしまうだけだ。
ましてや静香さんは妊娠中…。
涼ちゃん達は試合前は家族でも会う事は簡単な事じゃない。