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第5章 部外者…



相手の突進に涼ちゃんの足が1歩下がる。

涼ちゃんの姿勢が折れたように見えた。


ズドンッ…


鈍い音が涼ちゃんのグローブから響く。

相手選手の身体がくの字に折れる。

いつか見た霧島さんと涼ちゃんが重なった。


『理梨の為に、あそこまで上がってやるよ。』


あの時、そう約束した涼ちゃんがその約束を果たしている。

チャンピオンの絶対的力を相手に見せつけた試合。

開始1分でのボディーブローによる完全K.O.勝ちにアリーナから割れんばかりの歓声が巻き起こる。


「さすが涼二君…、強いわね。」


静香さんも感心している。

誰もが興奮をしているアリーナの中で涼ちゃんだけが涼しい顔のままリングの上で拳を上げて勝利宣言をしていた。

あそこまで涼ちゃんが強くなっているとか思っていなかった。

本気でチャンピオンを取ってプロポーズするつもりだった事を理解する。

だから興奮をしていた。

自分を抑える事出来ずに私に本気をぶつける事で興奮を治めたのだとわかる。

この後、どんな顔をして涼ちゃんと会えばいいのかわからなくなって来る。

たった1分の試合だったのに会場の熱気が収まらずにどんどん白熱していく。

次は静香さんの顔が青ざめていく。

霧島さんの試合が始まるから…。


「霧島さんなら大丈夫ですよ。」


そう言って静香さんの手を握る。

気休めにしかならない事はわかっている。

いくら涼ちゃんや霧島さんでも油断をすれば負けたりする。

無敗を誇る涼ちゃんでも


「本気の霧島さんにだけは勝てない。」


と必ず言う。

その霧島さんでも何度か負けた事がある。

そのたびに会長さんがハリセンを振り回す姿を私も静香さんも知っている。


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