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VERTEX
第5章 部外者…
誰よりも練習をする霧島さん。
その霧島さんを見習って涼ちゃんもここまで来た。
霧島さんなら大丈夫なはず。
そう思わないとやってられない。
会場が再び暗闇に包まれると観客の歓声が止み、静寂が訪れる。
私が握る静香さんの手に力が籠る。
霧島さんなら大丈夫…。
そう思っていた。
試合開始は涼ちゃんの時よりも盛り上がっていた。
なのに…。
相手ともつれ合うように霧島さんがリングに倒れる。
相手はなんとか霧島さんを捕まえて絞め技に持って行こうと必死になる。
霧島さんがそれを避けるように相手の足に挟まれながらもマウントを取る。
そこで攻撃をするべきなのに霧島さんが躊躇する。
モタモタとする試合が続いた。
霧島さんらしくない戦い方が続く。
3分3R…。
フルまでそんな地味な戦いがリングで繰り広げられるから観客はほとんど歓声を上げない。
テレビカメラの映像がスクリーンに写し出されるからリングでの状況は見えている。
相手が霧島さんに絡み付いては霧島さんがマウントを取り、モタモタが繰り返されてはレフリーが入って止めるを繰り返す試合。
ラスト10秒にタイムキーパーから拍子木が鳴る。
霧島さんも相手選手もボロボロなのに観客席ではウンザリ顔の人が多い。
霧島さんだって必死に戦ったのに…。
派手なショーのような戦いを好む人達はチャンピオンの貫禄を見せる完全K.O.を望む声が多い世界。
地味に絡み合いもつれ合うだけの戦いは後で
『調子が悪かった?』
とまで言われてしまう。
霧島さんや涼ちゃんは見せ物じゃない。
そう言って反論してやりたくなるVERTEXの世界がまた嫌いになる。