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第5章 部外者…



結局、霧島さんの試合は判定に持ち込まれる。

ギリギリのポイントで霧島さんの優勢勝ち。

ドローの延長戦にならずに済んだ事に静香さんと2人でホッとする。

レフリーに勝利宣言を受けて拳を上げた霧島さんの姿にはもう戦うスタミナが全く残っているようには見えなかった。

テレビ放映も終わりスクリーンには今日のダイジェストが流れる。

主催者の挨拶や司会者からの次のトーナメントの日程説明が始まる。

今日のトーナメントで勝ち上がった人での組み合わせの発表だった。

私と静香さんはぼんやりとそれを聞く。

まだ戦うの?

そんな気分しかいつも湧いて来ない。

チャンピオンが決定するのは年末…。

今年の年末は2日間に渡る試合になっている。

まずは29日に前夜祭。

31日の大晦日に頂上決戦というシナリオ。

去年よりも派手な祭典になると誰もが興奮気味。

この興奮状態の会場でウンザリ顔をしているのは私と静香さんくらいだと思う。


「霧島さん…、大丈夫かな?」

「恭ちゃん…、ちゃんと戦えなかった。」


静香さんが声を震わせていた。

戦って欲しくはない。

だけど、それが仕事である以上はちゃんと戦えないと何がいけなかったのかを考えてしまう。

もしかしたら自分のせいかもしれないと自分を責めてしまう静香さんの気持ちが理解出来る。


「戦いにくかっただけですよ。」


他の観客が席を立ち帰る中、私と静香さんだけが席から動けない。

ほとんどの観客が居なくなる頃に篠原さんが来て静香さんの分のジムパスを渡してくれる。


「恭ちゃんは?」

「怪我も無いし、大丈夫。少し疲れているくらいで、会長がお冠だよ。」


篠原さんが苦笑いをする。


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