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VERTEX
第7章 仕事だから…
「貴女じゃ話にならないわ。RYOJIさんを出してくれる?」
「それは出来ません。」
「いい加減にしてよ!高校生に仕事の邪魔されるとか迷惑だって事もわからないの!」
国崎さんが声を荒げて来る。
シャワーの音が止まったから涼ちゃんがお風呂から出て来るとわかる。
今は涼ちゃんの姿を国崎さんにだけは見られたくないと思う。
「何の騒ぎ?」
廊下側からもう1人の女の人の声がする。
和美さんが私達の向かいの部屋から出て来た。
「RYOJIさんと仕事の打ち合わせをしたいのに部外者に邪魔をされて迷惑をしてるんです。」
国崎さんが和美さんに状況の説明をする。
私は黙ったまま扉を開けないようにする。
「申し訳ないけど…、国崎さん。RYOJIさんならこの時間の仕事はお断りになってるから無理です。」
和美さんが手帳を開きながらそう言った。
「どういう意味ですか?」
「VERTEXが選手に仕事の連絡をする場合のマニュアルがあるんです。RYOJIさんに連絡をする場合は午前中のみの扱いになってるの。つまり、この時間の仕事はRYOJIさんにとって迷惑な時間にしかならないって事なんです。」
VERTEXは選手の練習時間や生活を守る保証をしている。
よほどの緊急の連絡以外は選手に直接の連絡をせずにジムを通して話をする規約になっている。
その為のマニュアルがあるのだと初めて知った。
国崎さんが嫌な顔をする。
「そういう事ですから…。おやすみなさい。」
私は和美さんに頭を下げて扉を閉めた。
「大丈夫か?」
涼ちゃんが髪を拭きながら私に聞いて来る。
お風呂の中で外の会話を聞いていたらしい。
「大丈夫だよ。だってマネージャーだからね。」
冗談っぽく笑って見せる。
「その調子で頼むよ。」
涼ちゃんが笑ってくれるからホッとした。