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VERTEX
第8章 したい…
早く終わって欲しいのに…。
それしか頭に浮かばない。
二日酔いとか聞くと国崎さんに同情をする気持ちにもならない。
涼ちゃんを早く自由にしてあげたいとしか思わない。
休憩の後も何度も国崎さんが涼ちゃんに対して表情を作れずにNGばかりが続く。
最終的に監督さんとスポンサーさんの話し合いでこのベッドシーンはCMでカットされる事が決定した。
「セリフ無しのCMなら大根でも大丈夫って、誰が言ったんだよ。」
「アスリートの方が演技が出来るって知ったからショックなんだろ?」
片付けをするスタッフさんから嫌味が聞こえて来る。
「理梨…、時間が出来たからロードに付き合ってくれないか?」
涼ちゃんが頬にキスをして聞いて来る。
まだ3時半…。
「いいよ。」
部屋で動きやすい服に着替えをして涼ちゃんとホテルを出る。
ホテルは観光用に自転車の貸し出しをしているから私の分だけ借りる。
約1時間のランニングを涼ちゃんがする後ろを自転車で追いかける。
夕日が沈む海岸に出て涼ちゃんがダッシュを繰り返すのを私は座って眺めるだけ…。
汗だくで砂まみれなのに涼ちゃんはご機嫌で海岸を走り回る。
相変わらずの犬男だなぁ…。
昔は走り回るとかしない子供だった。
私の方がお転婆で走り回る子供だったから涼ちゃんは私を必死に追いかけ回すだけだった。
その後、ジムに通い出してから毎朝、学校に行く前にランニングをするようになってから走り回る子供に変わっていった。
今は私が涼ちゃんを追いかける立場に変わっている。
「ちょっと、いい?」
嫌な声がして振り返ると国崎さんが居た。
「二日酔いは治りましたか?」
そんな嫌味が口から出た。