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第8章 したい…



私の嫌味に国崎さんが顔を歪める。


「貴女なんかに私の立場なんかわからないでしょ?」


国崎さんがそんな風に言い出した。


「彼が貴女しか見ない人だってわかってる。それでも私には彼を利用しないとこの世界で生き残る事が出来ないのよ。高校生の貴女にはわからないでしょ?」


髪を振り乱して女優らしくない振る舞いをする彼女にうんざりとした。

涼ちゃんがこっちを見ている。

ゆっくりと砂浜を1歩1歩と踏みしめながらこっちに向かっている。


「彼を利用したいですか?」


涼ちゃんを見ながら国崎さんに聞いていた。


「いけないの?」

「彼を見ない貴女が涼ちゃんを利用だけしたいと言うのは傲慢じゃないですか?」

「どういう意味?」


国崎さんは涼ちゃんを見ていない。

私だけを見て私だけに自分の不満をぶつけている。

私は涼ちゃんだけを見る。

涼ちゃんは私だけを見てこっちに来る。


「涼ちゃんを知らない人に涼ちゃんを利用する権利なんかありません。涼ちゃんは自分の努力だけで今の涼ちゃんになった人です。誰にも頼らずに誰も利用せずに自分の力だけでチャンピオンになった人です。」


私は私の思いだけを国崎さんに言う。


「この世界に努力とかないのよ。あるのは売れるか売れないか…。それだけしかないんだから。」


国崎さんは私なんかの言葉に納得をしない。


「理梨!」


涼ちゃんが私を呼ぶ。


「努力をしない人なんか誰も助けてくれないし、誰も見てくれない。そんな人が売れる訳がない。」


私は立ち上がって涼ちゃんに手を伸ばす。

涼ちゃんが私の手を掴む。


「理梨に近寄るな。」


涼ちゃんが国崎さんを睨み付ける。

国崎さんは黙ったまま海岸から立ち去った。


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