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Jacta Alea est.
第1章 叙任式
身体についた泡を洗い流すと、アヴィレスは湯船からあがった。
テーブルに置かれていた白いバスローブを腰に巻き、剣とナイフを持って部屋に戻ると先程の修道僧が用意してくれたであろう寝間着と明日の叙任式のための服と鎧が畳まれてあった。

慈愛を表す神聖な炎の赤と清らかな信仰の白を基調とした上質な服。聖職者でもなんでもない自分が聖都の騎士の服装をすることに違和感しか覚えなかったが、これで「神の御加護」とやらが自分の身を守ってくれるのであれば万々歳だ、とアヴィレスは冷めた気持ちで鼻を鳴らし、さっさと寝間着を着てベッドに潜り込んだ。来るかもしれない刺客に常に応戦できるようにナイフは枕の下に忍ばせた。
旅路で幾度となく危機から救ってくれた短剣。バトラー家の財産であったが、父の形見として旅に出る時にこっそりと持ち出したものだ。柄にエメラルドが嵌め込んであり、その刀身は細身ながらも白く美しい。強盗に奇襲され、身ぐるみを剥がされた時もこのナイフだけは譲らなかったほど、自分の人生に寄り添ってきた大切なものであった。

(神の御加護より、このナイフの方がよっぽど安心できる)

人生を信仰に捧げる聖職者には聞かせられないが、アヴィレスは月明かりに光るエメラルドを眺めながらぼんやりと不届きなことを考えていた。不届きであろうと、自分の心の中までは神でさえも不可侵である。ジョナサンが殺された以上、自分の身は自分で守らねばならない。
小さく溜め息をついてナイフを枕の奥に押し込んだ後、アヴィレスは静かに目を閉じた。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「……最後に教皇様がいらっしゃって貴方の肩に剣を置きますから、その後に剣を受け取って叙任の儀が完了いたします」

教皇の玉座がある大広間に向かう廊下を歩きながら、厳格そうな老いた司教が叙任式の段取りを説明する。新品の鎧が体にまだ馴染まないアヴィレスはその説明をぼんやりと聞き流していた。

結局気を張っていたせいで深い眠りに落ちることもなくそのまま朝を迎えてしまい、これまた豪華な朝食を食べても頭はぼんやりしたままだった。これから教皇の玉座の間で7人の大司教たちに見守られながら叙任式を行うという緊張が気力を保っていた。
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