この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
Jacta Alea est.
第1章 叙任式
美味しく温かい夕食の後、アヴィレスは徐々に襲ってくる眠気に抗いながら隣の部屋に備わっているバスルームに向かった。
若い頃は旅の道中で野宿しても数日間食べるものがなくても疲れがすぐ来ることは少なかったが、老いたのかと服を脱ぎながらぼんやり考えていた。

手早く服を脱いで裸になり、ゆっくりと湯気が立ち上る浴槽に足を入れた。その間、いつ身を襲われてもいいように剣とナイフは手の届く範囲に置いた。じんわりと熱い湯が身体の筋肉を解きほぐすのを感じながらも、アヴィレスは少なからず緊張していた。
前教皇のジョナサンが殺されたということは、その殺した犯人やその派閥が、次に自分の身を襲ってくる可能性が高い。前教皇やメーヴェ大司教がわざわざ手紙を送って、遠くの地から呼び寄せた剣士を、危険分子と見なさないわけがないからである。

聖都は神の加護によって守られた神聖な聖域であるはずなのに、肌にびりびりと感じる不穏な空気が不気味で気持ちが悪い。
ねっとりと纏わり付くようなこの雰囲気の中、ジョナサンは日々恐怖を抱いて死んでいったのだろうか。誰か他に助けを求められるような友人はいなかったのだろうか。彼は頑固で、神の教えに対しては厳格な人だったが、義理堅く優しい人間だった。何故殺されなければならなかったのか。

「……」

味方と敵を見分ける必要があるな、とアヴィレスは顔にお湯をかけて手の平で擦りながら考えた。果たしてこの場に味方がいるのか定かではないが、まずは情報を集めるところから始めなければいけないだろう。

揺れる水面をぼんやりと眺めながら、アヴィレスは修道僧が用意してくれたと思われる石鹸をおもむろに手に取り、腕に擦り付けてごしごしと洗い始めた。浴槽の中に白い泡が広がり、ふわりと良い香りが立ち込める。
貴族として自分の城に留まる生活に嫌気が差し、西大陸(ウェストゥア)の最果てや東大陸(イストゥア)では剣士として放浪した身であった自分が、まさか聖都で教皇御付きの騎士になるとは、人生とは分からないものである。豪華な浴槽で上質な石鹸の匂いを漂わせるとは、半年前の自分だったら信じられないことだろう。

聖職者のように神に対する敬虔な信心深さは持ち合わせていないが、親友であったジョナサンの遺言の真相を確かめる役目はきっと神が与えてくれたものだろう。
/16ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ