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姫巫女さまの夜伽噺
第10章 人間の世界
何にしても、とにかく言伊良を見つけ出さなければ。
焦るあまり、またもや飛び出そうとする志摩を
近江と美濃が引き留めた。


「ダメです、志摩様!お体に障ります!」


「志摩様、めっ!いけません!
いくら伊良様のことが大切だったとしても
お宿のことも考えなければです!」


立て続けに童子に叱られて、志摩はまたもや奥歯を噛みしめる。


「宿も大切だが…」



(愛蘭…あいつは、いま、どうなってるんだ…)



「お宿は私たちの基盤です。
そこがなければ、志摩様も、そして穂高様さえまたはぐれて散り散りになってしまいます。
伊良様がお戻りになられて、お宿がなければ
彼女もまた居場所を失ってしまうんですよ!」


近江の言葉に、志摩は散々自分を責めた後に
結界からもう一歩、中に踏みとどまった。
それを見て、近江も美濃もほっと一安心する。


「悪かった。取り乱した。もう、こうなったら…」



(頑張ってもらうしかない。
一番毛嫌いして、欠点だと思い込んでいる部分は
実はあいつには欠かせない点だということを
今こそあいつ自身が分かる時なのかもしれない…)



「近江、美濃。
悪いが宿に戻って、これを伝えてくれ」


俺は、ここから絶対に動かない。
そう固く誓って、志摩は二人を送り出した。
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