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姫巫女さまの夜伽噺
第11章 妖の世界
術者を無くしたその黒い塊は
力が維持できなくなり
空間が歪み始める。


「ああ、後でにすればよかった。
ごめんねみんな、走って」


「おまえなぁ、もう少し悪びれろよ!」


「ははは、ごめんって」


なんとも気の抜けた会話をしながら
五人は駆け出して宿へと戻った。


伊良は走ることができず
疲労困憊の志摩におぶさりながら
その懐かしい銀髪に顔を埋めて一人で安堵の涙を流した。


「もう直ぐです、みなさん走って!」


近江が先に入り口で手を振る。
結界はわらわらと崩れ、岩がどんどん落ちて来る。


四人が走り抜けてそこから出た瞬間。
どごーん、という大きな音を響かせて
洞窟の結界は崩壊した。


「良かった、みんな無事で」


穂高が、その場にしゃがみこむと
美濃のお腹がぎゅるぎゅると音を立てて鳴り
一気に緊張が解けた。


「みんな、ご苦労様。後で、美味しいご飯にしよう」


穂高の爽やかな一言で
この一件は落着した。
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