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姫巫女さまの夜伽噺
第1章 まよいまやかしその先に
もう何度目だろうか、これを経験するのは。
バイトでヘトヘトになって帰って来たマンションで
自分の部屋の鍵を開けようとすると
中から女性の声が聞こえてくる。


その声に応じるように
彼の攻めたてる声も聞こえ
だんだんと女性の声が大きくなる。


愛蘭(あいら)はため息をついた。
自分のマンションなのに
まるで自分のものとは思えない日がある。


彼とは居酒屋で声をかけられて意気投合し
そのまま流れで付き合う事になった。
会って二回目で手を出されそうになり
それを拒絶したのが、この最悪の事態の幕開けだった。


「あっそ、ならいいよ」


そう言った時の
あの彼の冷めた顔を忘れられない。
否応無しに合鍵を奪われた。


それ以来、まるでラブホがわりと言わんばかりに、
愛蘭のマンションに知らない女を連れ込んでいた。
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