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姫巫女さまの夜伽噺
第1章 まよいまやかしその先に
「はぁ…」


愛蘭のため息とともに
女性の声が止んだ。


鍵を開けて中に入ろうとすると
最悪な事に
内側のチェーンロックがかけられていた。


ガタガタとドアを鳴らすが
部屋の中では
第二回戦が始まってしまった。


こうして自分の部屋に入れずに
ドアの前で夜を明かしたことは数え切れない。


もうどうしていいか
さっぱりお手上げだった。


その場でうずくまって
寒い冬の空気に身を縮めていると
いつの間にか寝てしまっていた。
体は寒さでカチカチで
冷え切ったお尻が痛い。


ガタガタ鳴る歯をどうにかおさめて
ドアノブに手をかけた時
ガチャンという音とともに中から彼が出てきた。


目が合うと
「お前いたのか」とだけ言われる。
そこで待ってろと中に彼が戻り
愛蘭はその場で立ちすくむ。


しばらくして戻ってきた彼の手から
ぽいっと投げ渡されたのは
愛蘭の通帳だった。
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