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姫巫女さまの夜伽噺
第6章 志摩の過去

「……!」

志摩は襖を開けて
その惨状を見ると絶句した。
いつもの軽快な嫌味が飛ぶこともない。


縛られたままその場に転がされて
身動きする気力もなく突っ伏した伊良の姿が
志摩の脳裏の光景とフラッシュバックした。


「……志摩?」


泣き疲れたのか、叫び疲れたのか
掠れた声で伊良が呟き
ほんの少しだけ頭を動かした。


「…志摩、なの?」


「ああ…」


「……見ないで…」


その声を放った後
伊良の目から涙が溢れた。
なぜか志摩には見られたくなかった。


「…阿呆、できるかよ」


志摩は狐火で縄を一瞬で燃やし尽くし
伊良の身体を解き放った。
あちこちがミミズ腫れになった身体を抱きとめると
そのまま湯殿へと連れて行く。
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