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愛DoLL☆美しき野獣
第5章 五章
エドワードの屋敷は、横浜の港の見える丘公園付近にあった。
ジャックスホード家の数あるうちの別邸のひとつである。
ここは、エドワードが幼少時代過ごしたことのある屋敷だと、使用人兼管理人の、オーバックという紳士は真琴に話した。
「本当に、夜分遅くすみません。」
「いいえ、うれしいですよ。エドワード様がこの屋敷に来られるのは何十年ぶりでしょうか。」
「そんなに訪れてないんですか?」
「エドワード様がとても可愛がられていたビーグル犬が亡くなられて以来、彼はここを訪れないんですよ・・。」
車から降りて門から玄関までがやけに遠かった。
バラのアーチをくぐると、手入れの行き届いた庭が見えた。
噴水の横に、大きな石造が建っている。
その石には横文字で、¨シエル¨と彫られていた。
「あれはもしかして、そのワンちゃんのお墓ですか?」
「はい、毎年シエルさまが亡くなられた日には、エドワード様から届けられた色とりどりのお花が華やかに飾られます。」
「エドさんは、そのワンちゃんを、とても愛してたんですね。」
「はい。シエルさまが亡くなられてから、彼はひどく変わられましたらね・・。」
「そうなんですか・・。」
「お部屋へ案内します。今、妻は寝ていますが、後ほどご紹介します。」
この洋館を、夫婦ふたりで管理しているとオーバックは言った。
少なくとも、ここでふたりきりで暮らすわけではないことに、真琴はホッと肩を撫で下ろした。
しかし、オーバック夫婦の家はこの屋敷の外にあるので、基本的に夜は、この屋敷には立ち入らないらしい。
真琴が案内されたのは、2階の南側の客間だった。
清楚なセミダブルのベットとチェスト、鏡台の上に大きな花の絵が飾られていた。
「では、7時ごろ朝食をお持ちします。」
「はい。」
オーバックが出て行くと、真琴はすぐさま鏡台に目がいった。
今の自分の姿を見る。
制服から、私服に着替えたけど、首筋に残されたキス跡が消えたわけじゃない。
こんな展開になって・・・正直まだ気持ちがついていけていない。
(潤さん・・・心配してるかな?せめて、さよならをちゃんと言いたかった・・。)
「…ッ!!!」
潤の事を考えると起こる偏頭痛は、更にひどくなるばかりだった。