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身代わりの夜
第8章 待ちぼうけ役員秘書
 啓太と身体を重ねてから三週間がたっていた。

 最初はほんの気まぐれだった。
 恋人だと思っていた男に裏切られ、さびしい夜をなぐさめてくれる相手が欲しかっただけ。
 正直、つき合うつもりさえなかった。

 けれど、身体を交えてみると、自分でも意外なくらい乱れてしまった。

 男のモノが立派だったせいではない。
 いや、それもないわけではないが、それよりも、啓太の前では素直に己の欲望が解放できたのである。

 派手な外見で誤解されることが多いが、梨華は性に対しては受け身で、いつも相手の男に合わせていた。
 求められればやるが、積極的にエッチな行為をすることはなかった。

 なのに、あの夜は驚くほど大胆になれた。

 男が未経験だというせいもあって、出来の悪い弟の面倒を見る姉の気分でいるうちに、いつしか、梨華の方が官能の大波にとらわれてしまったのだ。
 あられもない声を張り上げて何度も絶頂に導かれた。

 あんなに激しく気をやったのは初めてだった。

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