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身代わりの夜
第8章 待ちぼうけ役員秘書
 一度のつもりが、三日と空けずにデートするようになった。

 身体だけの割り切った関係にしようと、最初に念を押していた。
 峻に裏切られた直後で、誰かに心を許すのが怖かった。

 だから会えばベッドを共にしたが、それがなくても啓太と一緒にいると楽しかった。
 なにより心が落ち着いた。

 あんなことがあって社内でも気になり、OLたちのウワサ話に聞き耳を立てるようになった。

 いつも女性上司にダメ出しされている落ちこぼれ社員というもっぱらの評判。
 でも、そうした話のなかに、真面目で勤勉な仕事ぶりがうかがえた。

(けっこう頑張ってるのよね)

 数日前の新ブランドの最終ラインナップを決める会議。
 貴野課長がよどみなく説明する傍らで、懸命にパワーポイントを扱っていた。
 つい目があった拍子に、ウィンクしそうになって困った。

 プライベートでも、啓太は表裏のない性格だった。

 これまでつき合ってきた男たちのように、頭の良さや有能さをアピールするわけでもなく、おしゃれな会話が得意なわけでもない。
 男っぽさを前面に押し出して、強く迫ってくることもなかった。

 そのかわり、素直にこちらの言うことを聞いてくれた。
 嫌なことがあれば一緒に怒ってくれるし、楽しい話題には一緒に笑い会える。
 演技ではなく、本心からの反応。そう信じられた。

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