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身代わりの夜
第13章 出張夜の部下指導
 横に立つ亜沙子がはっと息を呑んだ。

 啓太も近づいてくる男に気がつく。
 先日マナベ・フィットネスで会った村木雅章だ。
 高級なスーツ姿には、相変わらず隙がなかった。

「忙しそうだな」

 整った白い歯をのぞかせ、屈託のない笑みを女上司に投げかける。

「……こちらにいらしてたんですか」

 亜沙子の声は硬い。
 さきほどまでの魅力的な笑顔が、急に影を潜めてしまった。

 新ブランドのプロモーション会場は、著名アーティストによるメークアップショーに詰めかけた客たちで、華やかに賑わっていた。

 プロジェクト・チームのメンバーが中心となって、順次、全国の代表的な都市を回っているところだ。
 この三日間は関西地区のイベントで、啓太は営業所のスタッフと協力し、準備や専門販売店への対応に奔走した。

 〈シャンジュモン〉のキャンペーンは最終段階だった。
 プレスリリースによる反響も良好で、メイクアップショーは期待以上の人気である。

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