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身代わりの夜
第13章 出張夜の部下指導
 いつの間にか、缶ビールを飲み終えてしまった。
 自販機は一階のホールにあった。
 もう一本、買いに行こうと廊下に出る。

 山野辺がそこにいた。

 隣りの部屋のドアをノックしようとしているところだった。
 啓太を見て、しまった、という顔をする。

 そこが亜沙子の部屋だということに気づいた。

 問い詰める前に、自分の方から口を開いた。

「か、課長に誘われたんだよ。一緒に飲まないかって」

 啓太が黙っていると、さらに言葉をつなぐ。

「いや。お前にも声をかけたらどうかって言ったんだけどね。
 貴野課長、俺だけに来て欲しいって……
 よーするに、あれだよ。エッチのお誘い」

 秘密でも打ち明けるように、声を落とした。

「今日会場に来たマナベのコンサルタントの村木さん。
 課長の元カレでさ。
 オレ、いろいろ聞いちゃたんだよ。

 貴野課長、ああ見えて、夜の方はすごいらしくて。
 しかも、昼間はあんなに鼻っ柱が強いのに、ベッドじゃ虐められるのが好きなんだってさ」

 わかってるだろ、とばかりにニヤニヤ笑う。

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