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身代わりの夜
第16章 おわかれエクスタシー

 やがて、啓太が上半身を起こした。
 息が届く距離で梨華の顔を見下ろしてくる。

「梨華さん……すごくよかった」

「ああ、啓太……わたしも」

 どちらからともなく、唇が重なった。
 軽く触れ合せるだけのキスでも、胸に熱いものがあふれてくる。

 梨華は啓太の後頭部を引き寄せ、優しく髪を撫でた。

 激しい運動で汗に濡れた肌と肌がこすれる。
 互いの身体の温もりが心を落ち着かせてくれた。

(ずっとこうしていたい……)

 わがままな願望に胸を焦がした。

「あそこがすごく濡れてるけど。
 これって、もしかして……?」

 啓太がおそるおそる聞いてくる。

 結合部を少し動かすと、股間がおびただしく濡れているのがわかった。
 お尻の下のシーツもぐっしょりと湿っている。

 愛液だけでこんなに濡れるわけがない。

「やだ……わたし……」

 絡まり合った男女の陰毛にたっぷりと含まれているのは、粘り気のない、さらさらした液体だった。
 気持ちよすぎて失禁してしまったのだ。
 しかし、小水のようなアンモニア臭はなかった。

(もしかして……)

 エクスタシーの果てに、女性の秘部から体液が噴き出すという現象を聞いたことがある。

「恥ずかしいけど……し、潮を吹いたのかも」

 羞恥に肩をすくめ、小さな声で告げる。
 頬が真っ赤になった。

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