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身代わりの夜
第18章 暴走窓ぎわプレイ
 亜沙子の片手を掴んで、啓太はフロアを横切っていった。

「いやっ、手を離して……
 ああっ、こ、こんな格好で……いやだったら」

 長い脚を内股にして、情けない屁っぴり腰になる。
 つま先立ちの素足が哀れだったが、それを思いやる余裕など、今の啓太にはなかった。

 頭に血が昇り、視界が赤く霞んでいた。

 ハイヒールの音も軽やかに、日々、颯爽と闊歩していたオフィス。
 恥毛丸出しの全裸で引きずり回されるなんて、管理職の女性にとっては悪夢以外の何ものでもあるまい。
 上司の羞恥や屈辱を想像すると、胸をナイフでえぐられるようだ。

 それなのに――
 どす黒い感情を伴って、怖いほどに股間がたぎってくる。

 以前、ここで山野辺のふりをして手を引いた時、亜沙子は曲がりなりにも衣服をまとっていた。

 しかし今は生まれたままの素っ裸。
 残った方の手で胸を覆えばいいのか、股間を隠すべきなのか迷って、滑稽なくらい腕が上がったり下がったりしている。
 立ち止まって態勢を整える暇も与えず、啓太は机の間を縫って進んだ。

 部下をとめようとする女の声は、すでに涙まじりだ。

「ねえ、許して……古森くんを怒らしたのなら謝るわ。
 だから服を返して」

「だめです。
 服を着たら、権堂部長のところに行くつもりでしょう」

「だからって、裸にするなんて……ああ、信じられない。
 誰か来たらどうするのよぉ」

 わなわなと首を振るのを無視して、啓太は大股に歩いていく。
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