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身代わりの夜
第3章 かんちがい口唇奉仕
 亜沙子がぼんやりとあたりを見まわす。

「ここは……どこ?」

「あ、あの……課長のマンションです。
 すみません、上がり込んでしまって」

 切れ長の眼が啓太の方を向いた。

 床にお尻をつけ、ソファの座部にもたれかかった上司の前で、啓太は四つん這いになっていた。
 亜沙子の腰の横に両手を突き、カーペットに投げ出された片脚をまたぐ格好である。

 すぐに離れなかったのは、ここで立ち上がると、亜沙子の目前にテントを張った股間をさらしそうだったからだ。

 息がかかりそうなほど近くに、亜沙子の顔があった。
 いや、実際にアルコールを含んだ熱い吐息が頬を撫でる。

 二重の目蓋が半分降り、うるんだ瞳が天井の灯りを反射して煌めいている。
 焦点を結ばない虚ろな瞳が、やけに色っぽかった。
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