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身代わりの夜
第1章 憧れ美人上司
「は、はいっ、すみません。すぐにやり直します」

 亜沙子は小さく溜息をついた。

「わかったら早く作り直して。
 時間がないんだから。
 夕方からマナベ・フィットネスとの打ち合わせよ。
 三時にはここを出るからね」

「はい……」

 啓太は軽く頭を下げて、課長のデスクの前を辞す。
 OLたちのくすくす笑いを聞きながら、自分の席にもどった。

 隣りから山野辺峻《やまのべしゅん》が首をこちらに寄せて、啓太にだけ聞こえるように囁く。

「相変わらず貴野課長は細かいねえ。あんなに怒らなくてもいいだろうに」

「いや、課長の言うことは正しいよ。手抜きしたぼくがだめなんだ」

「いくら美人でも、ああきつい性格じゃ男が寄りつかないよな。
 ま、要領の悪いお前もお前だけど」

 山野辺は肩をすくめて、自分のパソコンに向き直った。

(お前のせいだろ)

 喉元まで出かかった言葉をぐっとこらえる。

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