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第1章 憧れ美人上司

　いつの間にか叱責がやんでいた。

　ちらっと眼を上げると、亜沙子の視線ともろにぶつかった。
　睫毛の長い、きらきらと輝く切れ長の瞳に見つめられると、魂まで吸い取られそうになる。

（ああ、亜沙子さん……いつ見ても綺麗だ）

　理知的な美貌に、暗い気分がたちまち霧散した。

　軽いウェーブのミディアムヘアに縁どられた細面の顔に、メリハリのある整った目鼻立ち。
　吊り気味の眼が少しきつい印象を与えるが、三十二歳の美人上司は洗練された大人の色香にあふれていた。

「ちょっと、古森くんっ。
　ちゃんと話を聞いてるの？」

　啓太のときめきをよそに、冷たい声が耳を打つ。
　きりりとした濃い眉がひそめられ、ローズピンクの唇がぎゅっと引き結ばれた。