この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
身代わりの夜
第5章 同僚の恋人と
向かい合ってみると、美しさが際立っている。
黒目勝ちの大きな瞳に、艶やかで官能的な唇。
男子社員の人気はいつも一番だ。
たしか二十七歳だと聞いたから、啓太や峻よりも二歳年上である。
お高くとまった女が多いと言われる役員秘書だが、艶美な雰囲気に反して、梨華は気さくな性格だった。
話題が豊富な上に、聞き上手でもある。
最近見た映画の話で盛り上がる。
けれど、話の途中で急に物憂げな表情になることがあった。
「どうしたんですか、今日は」
思い切って尋ねた。
なんのこと、とでも言うように、梨華は小首を傾げる。
ショートカットの黒髪が、頬のあたりで揺れた。
うるんだ双眸にのぞき込まれ、逆に啓太の方があわててしまう。
「な、なんだか、さびしそうでしたので。
なにか嫌なことでもあったのかなって」
さっき見た涙が気にかかる。
明るい笑顔も、どこか無理している感じがあった。
「やだ、へんなこと言わないで……って、バレバレよね。
実はフラれちゃったんだ」
「まさか、山野辺と……?」
梨華は自嘲的な笑みを浮かべて、うなづいた。
黒目勝ちの大きな瞳に、艶やかで官能的な唇。
男子社員の人気はいつも一番だ。
たしか二十七歳だと聞いたから、啓太や峻よりも二歳年上である。
お高くとまった女が多いと言われる役員秘書だが、艶美な雰囲気に反して、梨華は気さくな性格だった。
話題が豊富な上に、聞き上手でもある。
最近見た映画の話で盛り上がる。
けれど、話の途中で急に物憂げな表情になることがあった。
「どうしたんですか、今日は」
思い切って尋ねた。
なんのこと、とでも言うように、梨華は小首を傾げる。
ショートカットの黒髪が、頬のあたりで揺れた。
うるんだ双眸にのぞき込まれ、逆に啓太の方があわててしまう。
「な、なんだか、さびしそうでしたので。
なにか嫌なことでもあったのかなって」
さっき見た涙が気にかかる。
明るい笑顔も、どこか無理している感じがあった。
「やだ、へんなこと言わないで……って、バレバレよね。
実はフラれちゃったんだ」
「まさか、山野辺と……?」
梨華は自嘲的な笑みを浮かべて、うなづいた。