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第1章 憧れ美人上司

　ふと見るとスマホでメールを打っていた。
　啓太の視線に気づき、にやっと笑う。

（今日もデートの約束かな）

　山野辺は数ヵ月前から、役員秘書の加納梨華《かのうりか》とつき合っている。

　誰にも言うなよ、と念押しされて、男性社員の憧れの的である社内一の美女を紹介されたのは、つい先日のことだ。

　そんな同期に比べ、啓太は二十五歳にもなって、一人も女を知らない。
　好意を持つ女性の前だと上がってしまう性格のためか、いまだにまっさらな童貞である。