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女社長 飯谷菜緒子
第3章 婚約
寿子がこの話題を出して来るのは分かっていたので、この対応ができるように何度もシミュレーションしたのだ。

「それが分かっていながら、それでも居間側のために働くと言うのですか?居間側が憎くはないのですか?」

と寿子は申し訳なさそうに、しかし、少し意地悪く尋ねた。

これも菜緒子には想定の内だった。

「申し訳ありませんでした。私が好きでもないただの友達に過ぎない男と誤解を招くようなことをしたばかりに居間側様にもとんだ御心配をおかけしました。私のせいで専務と常務にも申し訳ないことを致しました」

菜緒子は畳に手を着いて深々と頭を下げた。
本当に申し訳なさそうに、自分の軽率さを責めるようにお詫びを続け、悔しさや恨みなどは微塵も感じさせない。

何度もシミュレーションしたとはいえ、今までの中で最高の演技である。もしかしたら自分は演技派の女優になれるかも知れないと菜緒子は思ったが、笑みが表情に出ないようにそんな考えは封印した。

「うむ」と言ったきり寿子は少し黙る。

目の前にいる菜緒子の姿に嘘はなさそうだ。菜緒子は本当に翔也のことも透真のこともただの友達にしか思っていなかったのか・・。

だとすれば、とんだ勘違いによる勇み足で貴重な人材をふたりも切り捨ててしまったことになる。
それはお詫びのしようもない、取り返しのつかないことであると、厳しい表情を崩さないように努めながらも内心は狼狽している。

どうする、しかし菜緒子は言っているではないか。自分の軽率な行いが招いた不幸だと。そうだ、悪いのは菜緒子だ。いくら平成という時代になったからと言って女子が好きでもない男と二人きりで会ったりするものではない。

こんなことを寿子は瞬時に考えた。

「誰も見ていないと思っても、誰がどこで見ているか分からぬのが人の世の常というもの、幼い頃は男子と一緒になって野山を駆け巡っておられたようですが、もはや年頃の女子となられたのです。行いはくれぐれも慎重になされた方がよろしいですよ」

寿子は厳しい表情を崩さぬように言った。

「以後、肝に命じましてございます」

菜緒子はひれ伏しながらも凛とした表情を崩さない。

まるで侍のように潔く威風堂々としている。
この男勝りなところに真次は惚れているのだろう。
菜緒子には社長としての器が充分に備わっていると寿子は思った。
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