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女社長 飯谷菜緒子
第8章 愛人契約
ミツバが株を保有するまでもなく居間側重工はミツバのためにあるも同然だから、これまで以上にミツバのために心血を注いで尽くしていくと誓った。

「そんなに居間側を、そしてこのミツバを愛しているのか」と信彦は厳しい顔で役員たちを睨む。

「もちろんでございます」
「この命よりも大切に思っております」

懸命に土下座をする役員たちを鬼のような厳しい顔で睨んでいた信彦が突然笑い出したので役員たちは面食らう。

「この大馬鹿者め。そんなに大切なモノを色仕掛けなどで・・」

土下座をしている役員たちがばつが悪そうな顔をしたのを信彦は愉快そうに見る。

「女は好きか?」と言われてどう答えたものかと役員たちはおどおどとする。

「儂も大好きじゃ。だが、女好きも時と場所を選ばぬとこのような大事に至ることもあるぞ」

「はは~っ、面目次第もございません」

ペコペコとする役員たちを見て信彦は再び難しい顔をする。

「命よりも大切と言ったな」

「ははっ」

「女好きなのは困ったものだが、お前たちは優秀な人材じゃ、それに忠義も厚い。そんな人材に死なれでもしたら元も子もないからな・・よろしい、その忠義に免じて株はお返ししよう」

「あ、有り難き幸せにございます」

役員たちは涙を流して額を擦り付けて土下座をした。

信じられないことに買い戻すどころか売り渡した金額の半値以下で株は役員たちに戻された。

「よくやった、本当によくやってくれた」と真次は大喜びで役員たちを労って頭を下げた。

「お、おやめ下さい。元はといえば我らのしでかした不祥事でございます。社長に頭を下げられては・・」

役員たちは恐縮して真次に土下座をした。

「いえ、よくやってくれました。自分のしてしまった過ちを自らの責任で見事に挽回してみせたのです。流石は居間側の役席です」

と菜緒子は誇らしげに微笑んで役員たちを見た。役員たちは菜緒子にも深々と頭を下げた。

「女好きは大概にせねばならんがな」と菜緒子は悪戯っぽく笑った。

「それは身に染みました」と役員たちはペコペコと頭を下げる。その様子を見て真次は愉快そうに大笑いをした。

こうしてミツバによる居間側乗っ取り騒動は収拾した。

秘密裏に菜緒子と信彦の関係は続くことになったが・・。

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