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第9章 無敵の弁護士

どちらから言い出したのかはよく分からないが、意気投合してという流れでカラオケに行くことになった。

実は役員たちは酩酊する程に飲み過ぎてしまってカラオケでのことはよく覚えていないのだという。

酔って覚えてはいないが、触ったり抱きついたりしたのだと言われれば、それをきっぱり否定できるだけの自信はないという。

これは絶対に触ったり抱きついたり、もしかしたらそれ以上のことをやったに違いないと近藤は頭を抱えた。この役員たちは、いや、男なら誰しもがそうであるが風俗とかが大好きである。

そして若い娘が大好きで、だいぶ以前にはなるがセクハラまがいのことをしでかして厳重注意を受けたこともある。

どう考えても非は役員たちにある。

「バカ者どもめ、軽率な行動をしおってからに・・キサマたちに役員の資格はない。懲戒解雇だ、退職金も出ないぞ。一生刑務所に入っておれ」と近藤は凄い剣幕で役員たちを叱責した。

何とか示談で済まないものか・・。役員たちには退職金は不支給にしたからその分の資金を示談金に充てるしかないか・・近藤はいろいろなことを考えて悩んだ。

そんな最悪なタイミングで龍二が近藤を訪ねてきた。

「特許訴訟の件だが降りることにしたぜ」

龍二の口から信じられない言葉が出て近藤はさらにショックを受ける。

「居間側に引導を渡してやろうと調べを進めてみれば・・データを盗んで言いがかりをつけたのはコンドウの方じゃないのかい」と龍二は自信たっぷりに不敵に笑った。

「な、何か証拠でも・・」

近藤社長は明らかに動揺している。はったりも含めて龍二が言っていることを認めたような顔をしている。

「オレは負ける裁判はしないんでね。これから居間側に付いてコンドウと戦おうという段階で手の内は明かさないよ」と不敵に笑う。

「なんでも就活セクハラとやらで訴えられてるらしいじゃないか。そんな会社は裁判官の心証も良くはないだろうな」と龍二は近藤社長の痛いところを突く。

「ど、どうしてそれを・・マスコミにも報道はされていないことなのに・・」

近藤社長は益々動揺の色を見せる。

「こんな仕事をしているといろんな知り合いがいるから情報な何でも手に入るんでね」と笑っていた龍二が不意に険しい顔をする。

「何なら被害女性の弁護もオレが引き受けるぜ。示談には絶対にさせない」