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女社長 飯谷菜緒子
第9章 無敵の弁護士
「ま、待て・・示談で済ませた方が被害者の女性のためにも・・」

近藤社長は慌てふためいて龍二に頭を下げる。この弁護士に被害女性に付かれたらコンドウは徹底的にやられると焦っている。

「カネで済まそうという魂胆が気にくわねぇ。そういう被害に遭った女性というのは、世界中のカネを積まれたって消えない心の傷を一生背負って生きてくんだぞ。分かってるのか?」

龍二は汚いモノでも見るように近藤を睨みつける。

「就活セクハラをするような会社だ。裁判官の心証はかなり悪いだろうし、オレも全力で本当に盗んだのはコンドウだという証拠を積み上げる」

と言い放って龍二は立ち去ろうとしたが、部屋を出る間際に近藤に振り返った。

「おっかない兄ちゃんたちが見張っているみたいだけど変な考えは起こさない方がいいぜ。オレがここに来ることはちゃんと記録に残している。その帰りに何かあれば真っ先に疑われるぜ」

近藤社長は狼狽の色を隠せずに大量の汗をかいた。
狼狽しているのは物陰に潜んで様子を伺っていた要心棒も同じだ。いや、要心棒の方が狼狽している。

物陰に潜んで気配も消していた。その道のプロだから自信もあった。しかし龍二は要心棒たちの存在を察知した。また目つきが尋常でない。まさに武人といった感じだ。

龍二は弁護士でありながらあらゆる格闘技をマスターしている。また、ヤバいヤマなんて幾つも乗り越えてきた。命を落としかけたこともある。そういったヤバいヤマに比べれば今回のヤマは序の口といったところだ。

龍二がコンドウを訪問した翌日、コンドウが訴訟を取り下げてきた。
たまたまよく似ているデータだったので頭に血が昇ってしまったが、よくよく検証してみるとデータが盗まれた事実も確認できず、ましてや居間側や飯谷がデータを盗んだ事実も確認できなかった。
多大なるご迷惑をおかけし、また名誉を毀損するようなことをしてしまって申し訳なかったと多額の迷惑料まで提示してきた。

あまりにあっさりとコンドーが謝ってきたので菜緒子は思わず拍子抜けしてしまった。

「本当は自分たちが盗んだくせに盗っ人猛々しいとはよう言うぜ」と龍二は迷惑料の金額も踏まえて自分の成果に満足そうに笑った。

「この結果はそなたが・・?」
と菜緒子は龍二を見る。確かに敏腕弁護士だと思っていた。

「まあ、盗っ人猛々しいのはこっちも同じだけどな」
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