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牝獣の哭く夜
第9章 淫らな風景
「見ないでっ……お願いっ、見ないでええっ!」

 すらりとした美脚が、沼田の腕の中で激しく悶えた。

 力いっぱい押さえていないと、離してしまいそうだ。

 宙に浮いた膝下がばたつき、足枷のチェーンが無慈悲な音をたてる。
 パンストとショーツを膝のあたりに絡ませているのが、狼藉感を煽った。

 鏡の中で、官能美あふれる裸身がうねっていた。

  ああ 女体の曲線は
  うねり 波うち また よれる
  ああ 美しい やはらかい

 見ないで、といくら悲痛な叫びを上げられても、男たるもの、こんな魅惑の風景を見ないわけにはいかない。

 鏡に鮮明に映った美人上司の両腿の狭間を、まばたきも惜しんで注視する。

 クールな美女の下腹部に、黒々と茂る逆三角形の翳り。
 そのアンバランスさが、魂を奪われそうなほど卑猥だった。

 まさに堀口大學の「風景」だ。
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