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牝獣の哭く夜
第2章 祝賀会の夜

 美貴の設計はオーナーが求めるコンセプトを見事に表現するだけでなく、想定をはるかに超える質の高いデザインを提示した。

 細かいところにまで気配りがなされ、素材の採択、色彩の選定も斬新でいて的確。最近では美貴を指定する客も多い。

「それにしても、今回のホテル・ソレムニティの企画デザインは素晴らしかったですよね。これまでの設計二課の最高傑作じゃないかな」

 山崎隆介が得意そうに言った。

 若々しい端正な顔はすでにアルコールで赤くなっている。
 一流大学出身の、二十五歳になる若手のホープだ。
 美貴の下で二年間、主に工務部との調整を行っている。

「もう、山崎君ったら、自分でデザインしたみたいなこと言って。この企画の斬新なところは、ぜんぶ沢村課長のアイディアでしょう」

 と隆介をつついたのは塚本朱里だ。

 短大出の事務職として入社したので、歳は二歳若いが、隆介とは同期になる。
 ショートボブが似合うボーイッシュな美人だった。

 色彩選定のセンスを持っていることを美貴が見抜いて、今年からデザイン設計二課に引っ張った。
 パソコンが得意なため、内外装の完成イメージを3Dで表現する作業を担当している。

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