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牝獣の哭く夜
第11章 夜景レストラン
「諏訪さんがこんな隠し芸をお持ちとは、驚きましたわ」

「沢村さんは、普段はキャサリン・ヘップバーンのように怖いけど、笑うとそれこそ、『イースター・パレード』のジュディ・ガーランドみたいに可愛い」

「歯に青のりをつけて踊りましょうか?」

 美貴は笑ってそう言ってから、

「でも、わたしって、そんなに怖い女ですか」

 と、軽くにらんで見せた。

「これは失言だった。キャサリン・ヘップバーンは憧れの女優なんです。
 でも沢村さんも古い映画をよく御存じだ」

「父が好きでしたので、実家にビデオやレーザーディスクがたくさんありました。
 高校生の頃、よく見てたんです。
 諏訪さんこそ、お詳しいですね」

「僕の場合は、中学時代の友人にミュージカル映画好きなのがいてね。そいつの影響です。
 こんな話をしていると時間が経つのが早い」

 諏訪は腕時計を見て、

「もしよかったら、もう一軒、つき合ってもらえませんか。
 とっておきの店を沢村さんに紹介したい」

 美貴はワインのせいだけではない、ほんのりと桜色に染まった顔を頷かせた。


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