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牝獣の哭く夜
第12章 ふたりの男
 意識を取り戻してしばらく、美貴は自分の身に何が起こったのか理解できなかった。

 うつ伏せになってフローリングの床を見ている。
 首筋に痺れるような痛みがあった。

 何者かにスタンガンで襲われ、拉致されたのだと気づく。
 とっさに片桐と沼田の顔が浮かんだ。
 激しい恐怖心が襲いかかってきた。

 後ろ手に縛られ、褐色のフットスツールの上にロープで固定されている。
 ストッキングの膝が床について、祈りでも捧げているような恰好だった。
 スーツのジャケットとハイヒールは脱がされていた。

 マンションの一室のようだ。
 窓には淡いグリーンのカーテン。
 フットスツールと同じ褐色のソファが二脚並んだ横に、ダイニングにあるような木の椅子が置かれ、裸の男が縛られてもがいていた。

「諏訪部長……」

 美貴は眼を疑った。

 縛られているのは諏訪だった。
 美貴と同じように後ろ手に拘束され、口には荷造り用ガムテープが貼られて、唸り声しか上げられないようだ。
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