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牝獣の哭く夜
第12章 ふたりの男
 諏訪は全裸にされていた。

 胸毛のない発達した胸筋や、引き締まって割れた腹筋が剥き出しで、長く逞しい両脚は、足首で椅子の脚に固定されている。

 脚の間の黒々とした陰毛の陰に、しな垂れた陽根が見えた。

 あわてて眼を逸らせた。
 が、脳裏に男性器の残像がしっかりと焼きつけられる。
 カーッと顔が赧らんだ。

 諏訪は貴族的な顔を歪めて、手足の拘束から逃れようと、唸りながら暴れていた。

「気がつきましたか?」

 背後より聞こえた声は、沼田のものだった。

 諏訪の煩悶が激しくなった。
 怒りの眼を剥いて、沼田をにらみつけている。

「沼田さんっ、これはどういうことです。すぐにほどきなさいっ!」

 美貴は身悶えしつつ、きつい声を出す。

「諏訪部長まで巻き添えにして、あなた、どういうつもりなの!
 取り返しがつかないことになりますよ」

「覚悟を決めたのさ」

 沼田はふてぶてしい顔で、美貴の正面に立った。

「どうせ俺なんかの才能じゃ、東亜設計にいっても通用しない。
 片桐専務だって、あんたをモノにするために俺を利用しただけなんだ。
 それくらい、理解しているよ」

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