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牝獣の哭く夜
第19章 白百合の臓腑
 つき合いの長い沼田は、これまでに諏訪がどれほど女性の心を弄《もてあそ》んできたか、痛いほど知っていた。

 中学時代から、可愛い女子を片っ端からものにしてきた。
 それも、他の男子とつき合っている子を選んで横から奪う。
 さんざん嬲りつくし、飽きたら簡単に捨てた。

 その後も、諏訪の行状はエスカレートしていった。
 幸せな家庭を築いていた人妻や、未来を夢見る令嬢を慰みものにしたのを、よく得意げに聞かされた。

 それが、あらゆるものを手にした男の、最大の娯楽らしかった。

 沼田が絶望するのは、そうして弄ばれた女たちが、いつまでも諏訪を慕っていることだった。
 遊び飽きた玩具のように棄てられてもなお、すがりつき、抱かれたがっている女たちを見て、沼田は暗澹となったものである。

 しかし、沢村美貴はそんな女たちとは違うと信じていた。

 彼女には最後まで毅然としていて欲しかった。
 諏訪の凌辱に耐えて、身体は許しても、心までは許さないで欲しかった。

(それなのに……)

 何度かイカされただけで、簡単に堕ちてしまった。

 裏切られた思いだった。

(それなら、俺がもっともっと辱めてやる――
 死にたいくらい、恥ずかしいメに合わせてやるから)
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