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牝獣の哭く夜
第19章 白百合の臓腑
「沼田。拡げてみろ」

「はああ……やめて……ああ、恥ずかしい」

 拒絶の声にも、どこか期待しているようなニュアンスがある。
 女の翳りとともに、プライドまで失ったかのようだった。

(美貴さん、どうしてこんなに……)

 沼田は冷然として美しかった頃の上司の姿を思い浮かべながら、メイクをおとした素顔みたいなオマ×コを拡げていった。

 ぬちゃっ――水滴のついた細い糸を引いて、肉唇が右と左に開いてゆく。
 男を誘う甘酸っぱい濃厚な淫臭が、一気にひろがった。

「み、見ちゃいや……見ないでぇ……」

 もっと見てくれと言わんばかりの、悩ましい声だった。

 あからさまに剥かれた媚裂の奥は、サーモンピンクの粘膜が複雑なひだを刻んでいた。
 毛のない肉花弁がめくれ返って、愛液でぬめ光った媚肉――女の臓腑《はらわた》があらわに見える。
 まるで淫らな白百合だ。

  白百合の臓腑あらはに咲きにけり

 田中亜美の句である。

 山辺の道にひっそりと背を伸ばして咲く百合の花は高貴に美しく、花言葉が純潔、威厳、無垢だというのも頷ける。
 しかし反面、その香りは強くあからさまで、反り返った花弁や突き出た花芯も、見ようによってはひどく淫らだ。

 女性器を花にたとえるなら、気品と淫蕩さを合わせ持つ白百合こそふさわしい。

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