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滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪

わずかに顔を離した藤田は、ほんのり色のついた輪を見つめながら肝心の先端を避けるようにしてねっとりと舐め上げていく。部屋の灯りが、容赦なくその姿を細部まで映し出している。
――ああ、やっぱり見られている!
潤は心の中で叫んだ。
かつて誠二郎にわずかだが驚いた顔をされ不安を覚えたところ、「このほうが興奮する」と慰められた、平均的とされるものより少し大きめな乳輪。それがこれ以上ない至近距離で藤田に見つめられ、弄ばれている。
濡れた舌は時折からかいを思わせる動きで突起の側面をこすり上げてくる。潤はそのたびに、両腕の自由を奪われたまま大きく身をよじった。極度の羞恥に途切れることなく重ねられる刺激が、快感を増幅させる。
「やっ、ん、んっ……」
歯を食いしばり、漏れる声を喉の奥に押し込む。壊して――そう言っておきながらこうしていつもの癖で抵抗してしまうのは、これまでたった一人の男にしか晒したことがなかった声の色や身体の反応を、ほかの男のために変える術など知らないからだ。

